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集団だろうが、個別だろうが

ボクのやることは変わらない。

 

今週、ボクが担当することになったTくん。

 

中3、受験生。

 

すこしチャラついた雰囲気で教室に入ってきて

 

「自分、勉強ニガテなんですよぉ」

 

と自信無さそうに弱弱しく笑う。

 

ボクは

 

「大丈夫だよ!これから楽しく勉強して、成績上げちゃおうゼ!」

 

なんてことは言わない。

 

「とりあえず、このプリントやろう」と、

 

中1内容の問題を解いてもらう。

 

……。

 

うん。

 

なかなかのつまずきっぷり。

 

採点したプリントを前に、

 

ボクが静かに声をかける。

 

すると、Tくんは下を向いたまま

 

「さすがに、中三だし……。そろそろヤバいかな、って」

 

ポツポツと、不安を吐き出しはじめた。

 

教室に入ってきた時とは違う。

 

無防備な表情。

 

ボクは、彼の目を見つめ

 

粛々と

 

彼の話を聴く。

 

そして――

 

「そっかあ。で、Tくんはどうなりたいの?」

 

と、たずねる。

 

Tくんの目が一瞬まるくなり、左右に揺れだす。

 

「まだ……、わかりません……」

 

「だよね。じゃ、そこから固めよう」

 

でないと、

 

何に対して頑張ればいいのか。

 

迷子になるよな。

 

手がつかないよな。

 

「けど……」

「ん?」

「自分、〇〇高校へ行きたいかな、って」

「お、固まってるじゃん! じゃ、次のミッションはその高校に入るのに必要なことを集めよう」

「はい」

 

そのあと、少し話をした際に

 

ボクは彼に“あの言葉”を渡した。

 

途端、

 

彼の目の色がグルリと変わった。

 

最初の、

飄々とした

弱弱しい

自信の無さそうな顔では

 

もう無い。

 

男の顔だ。

 

眉根に力が入り、目がギラギラと輝き、顎を引いて、姿勢も整っている。

 

「いける?」

「はい!」

 

よし、やってやろうぜT!

君ならできるよ。

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