4月2日
バルセロナの早朝。
ボクは小鳥のさえずりで目を覚ました。
散歩でもしようと、ホテルを出てサグラダファミリアに続く石畳の道を歩く。
ビルの端から見えてくる巨大な塔は、クレーンの王冠をかぶっている。
まだ未完成なのだ。
「今日はあそこに荒ぶる虎の彫刻を作ろう!」
塔のテッペン付近を眺めながら、そう決めた。
血が騒ぐ。
そろそろ朝食ビュッフェの時間だった。
ボクはジャケットの襟を正すと、ホテルに向かう小路へと入った後、ボクは自室のパソコンの前にいた。
いつどのようにして自宅まで帰ったのかわからなかった。
いままでのことは全部夢で、スペインになんて行かなかったのではないかと思った。
けれども、ボクのスウェットにはバルセロナで食べたパエリアの米が付着していた。